Taklamakan

ぐったりした日常の断片

忘れ物が多い・片付けられない中学生のあなたへ これを読んで「ちょっとまし」になろう

はじめに

 こんにちは、吉海こすずと申します。私は現在大学生で、ADHDの診断を受けています。タイトルの通り、中学生のかたに向けてこの記事を書いていますが、小学校高学年くらいのかた、かつて中学生だったADHD傾向のあるかたにもぜひ読んでもらいたいと思っています。

 通知表に毎回「忘れ物が多いです」と書かれる、部屋はもちろん机の中もかばんの中もぐっちゃぐちゃ、宿題なんてまともに出せない……。これってはたしてかんぺきに治るのか?と問われると、残念ながらノーと言わざるを得ません。もしかしたら、とてつもなく努力をしてほとんどの問題をクリアしてきたようなかたもいらっしゃるかもしれません。でも、みんながみんな同じような努力ができるとは限りません。

 この記事を読んで、「これならできそうだ」「これやってみよう」と思えるところがあるなら、ぜひ実践してみてください。そうしたら、あなたの困りごとも「ちょっとまし」になるかもしれません。

 このあと長々と文章が続きますが、とりあえず「いらないものを捨てる」ことさえできればなんとかなると個人的には思っています。たまにでいい、気が向いたらいいので、45Lのビニール袋に「いらないもの」をぶち込むことを続けていれば、少しずつあなたの生活は快適になっていきます。

 それから、「困りごとには一見おかしな方法で対処する」というのが鉄則だと思っています。みんなが引っかからないところでつまずいているならば、みんながやらない方法で問題に対処していくしかないのです。もちろん、この記事で私が書いている内容がすべてではありません。専門家でもない、ただの一当事者がなんとかひり出した対処法をつらつらと書き連ねているだけですので、「こっちのほうがいいじゃん」という方法があれば、ぜひ教えてください。

学校編

 まず、あなたが学校で使っているかばんやリュックサックなどの中身をなんとかしましょう。もう、めちゃくちゃでわけわからないですよね。大丈夫です。時間はかかるかもしれないけれど、落ち着いてやれば、なんとかなります。仲のいい友だちに手伝ってもらうのもアリです。以下の手順に沿って、中身を振り分けてみてください。

用意するもの
・でかめ(45Lが望ましい)のビニール袋×1
・クリアファイル×2
・油性ペン×1
・ビニールネットケース(中身が見えるファスナー袋)B5かA4・5枚以上

やりかた
1.中身を全部出す
2.「あきらかにいらないもの」だけ45Lのビニール袋に入れる
3.プリント類・教科書とノート・その他の3つに分ける
4.主要5教科で必要なものをそれぞれビニールネットケース1袋に1教科ずつ入れる。他の教科も1教科あたりで必要なものが多ければ同じようにする
5.明日の時間割通りに必要なものをかばんに入れる
6.クリアファイル2枚に油性ペンでそれぞれ「いらないプリント」「なんでも」と書いてかばんに入れる
(6.5 ついでに部屋にあるいらないものもビニール袋にぶち込む)
7.ごみの日に45Lのビニール袋を捨てる

 どうでしょうか。少しはましになりそうでしょうか。6で作成した「いらないプリント」クリアファイルは、名前の通り「あきらかにいらないプリント」を発見次第入れる用途で使います。簡易的なゴミ箱のようなものです。パンパンになったら中身を捨てること。「なんでも」ファイルには必要そうなもの、まだ捨てたらまずそうなものを全部入れておきましょう。

 ポイントは、「親の手を借りない」ことです。親御さんにお願いをすると理由を聞かれたり、忙しいから後でねと言われてしまったりして、その間にやる気をなくします。最悪期日の過ぎたプリントを見られて怒られる、なんてこともありえます。やる気のあるうちにぜんぶひとりでやりましょう。

 ビニール袋などは家にあるかもしれませんが、置いてある場所がわかっていない場合は自分で買いましょう。中身を見られる前に捨てれば、少々まずいものが入っていても証拠隠滅できます(後でばれるかもしれませんが自己責任で)。ビニールネットケースなども含めてすべて百均に売っていると思うので、一緒に買ってきちゃいましょう。トータルだと少し痛い出費になるかもしれませんが、レシートを取っておけば、あとで親御さんがお金を出してくれるかもしれないのでとにかく自分で買いましょう。ごみの日はわからなければネットで調べるか、それとなくふだんおうちでゴミ捨てをしている人に聞いてみるとよいです。登校するときに(時間がぎりぎりでなければ)出してしまいましょう。

 これをやっても、いつの間にやら元通りになっているかと思います。それに気づいたら、また同じようにかばんの中身を整理してみてください。「どうしようもなくなる前に気づく」というのは特殊能力です。それができたらかばんの中は常にきれいなままのはずです。やばくなってからはじめて気づくのが我々なのです。気が向いたらやる、くらいのマインドでいるのがいちばんだと思います。

 つぎに、提出物の締切をなんとかしましょう。とはいえこれは、正直ひとりではむずかしいと思っています。学校側で教員以外にサポートする人が必要だと個人的には考えていますが、現状ほとんどそのようなシステムはととのっていません。そのため、「ひとりでやれるところはやる」というスタンスでこのあとの文章を書きます。もしこれでもできなかったらあきらめてその提出物はなかったことにしましょう。

必要なもの
・クリアファイル×1
・油性ペン

やり方
1.クリアファイルに「提出物」と油性ペンで書き、提出すべきプリント類を入れる
2.その日の宿題や明日提出すべきプリントなど、忘れたくない情報を油性ペンで手の甲に書く

 以上です。非常にシンプルかつ古典的な方法ですが、私はこれで乗り切っていました。完璧には程遠かったけれど、やらないよりはましでした。油性ペンは常に胸ポケットに入れておくとよいでしょう。手の甲に文字を書くのは恥ずかしいって? そんなかたはスマートなバンド型のメモがあるようなので、こちらを使ってみるのもよいかもしれません。https://www.wemo.tokyo/
でも私はこれをつけるのも忘れそうだ。校則に引っ掛かるかもしれないしね……。この程度のことでとやかく言うほうがよっぽどおかしな話だとは思うけれども。それはともかく、自室をなんとかしようというお話に移ります。

自室編

 そもそも私は自室がないに等しい環境で育ちましたが、「自分の部屋」があるかたのほうが多いだろうし、そうでなくても常に私物が散らかっている……という私のようなかたのために書いておきます。

用意するもの
・45Lのビニール袋×2以上

やりかた
 とにかく捨てよう。おそらくあなたの部屋には「あきらかにいらないもの」がかなり多く存在しているはずです。特にプリント類。ふだんの土日でもよいですが、時間に余裕のある夏休み、年度末で前の学年のものを捨てやすい春休みなどにおこなうのもよいでしょう。「あきらかにいらないもの」を捨てていくうちに、「なんとなく取っておいたけどやっぱりいらないもの」なども捨てられるようになります。捨てることに慣れましょう。

 いまは飽和の時代です。捨てる技術がなければものが溜まっていく一方なのです。半年に一度くらい、引っ越すつもりでものを捨てる会を開催しましょう。やる気になったらもっと回数を増やしてもよいです。そうすると数年かけて「あきらかにいらないもの」がほとんどなくなります。これってめちゃめちゃすごいことじゃないですか? 私にとっては革命と言っていいくらいのできごとでした。私は20歳を過ぎてやっと、いらないプリントが一切ない状態を手に入れました。PCと同じで、脳みそのストレージを開けておくにはごみを捨てなければならないのです。「なんかいらんものがある」というだけで、脳みその容量を圧迫していることに、捨ててはじめて気がつくと思います。

 もしやる気が出なければ音楽をかけて歌いながらやってもよいでしょう。そのうち集中して無言になっている……はず。だめならあきらめましょう。今日はその時ではなかったのです。

 それから、「いつか使うは使わない」ということを知っておいてください。これは受け売りですが、「理想の生活が実現したとき、自分はこれを使うだろうか?」と自分自身に問いかけてみるとよいです。ものを買うときも同じように考えてみると、無駄づかいを(ちょっとだけ)減らせるかも。

友人編

 さて、友人関係についてのお話をします。待ち合わせに遅れたり、持ってきてと言われたものを忘れたり、いろいろ困りごとが発生していると思います。「そういうヤツ」として認識されてしまえばこっちのものなので、あらかじめ「忘れっぽいんだ、ごめんね」と謝っておきましょう。だからといってそこに胡座はかかないこと。ミスをしたらその都度きちんと謝りましょう。場合によっては相手に迷惑をかけていることもあるので、誠心誠意謝ることを忘れないでください。

 それから、待ち合わせ時刻まで「これなら間に合うだろう」という時間に+20分余裕を持たせてみてください。そうするとだいたいちょうどよくなるはずです。20分追加されたらたいていのことはどうにかなります。

 それでも友だちとトラブルになってしまうことはあると思います。「いいヤツだけれど、時間には厳しい」というような相手とはいっそのこと距離を置いてしまうこともアリだと私は考えています。なぜならおそらく相手も「いいヤツだけれど、時間にはルーズ」だと思っているからです。このへんの感覚は本当にひとそれぞれなので、感覚が近い人間と仲良くなれると楽です。逆の電車乗っちゃった! 15分遅れる! 実は自分も時間ギリギリだから大丈夫! むしろ助かる! というようなぬるま湯に浸かって生きていきましょう。

メンタル編

 心も身体もちょうげんき! 心配することなんて一つもないよ! というかたも、ちょっとだけ耳を傾けてくれるとうれしいです。なぜならメンタルはめちゃくちゃ簡単にぶっ壊れるからです。発達障害を抱えているひとびとは「二次障害」といって、直接は関係ないけれども間接的な要因が重なってうつなどの精神疾患を抱えることが多いといわれています。診断を受けていない、あるいはグレーゾーンだと言われたかたも、要注意だと私は考えています。ここからは特に個人的な話になってしまいますが、私は忘れ物が多かったり時間にルーズだったりすることでそれはもうしこたま怒られてきました。その相手はほとんど母親で、何時間も怒鳴られ続けるというようなこともざらにありました。「でも、結局自分が悪いしな。怒られて当然だ」と当時は思っていました。

 でも、いまはそうは思いません。努力でどうにもならない欠陥を、頭ごなしに叱ることでは解決しないからです。「いやいや、自分はまったくがんばってない。多少は努力するべきだ」と思われるかもしれません。しかし、世の中には「がんばらなくてもそれなりにできる」ひともたくさんいるのです。世の中の当たり前に合わせるために、こちらががんばるべきだとは私は思いません。むしろ多数派だというだけで、時間にタイトだったり忘れ物が少ない人間が幅をきかせているだけです。ただ、どうしてもそこに合わせなければならなくなるときはあると思います。そんなときは、この記事に書いてあることを「しゃーない、やってやるか」という気持ちで実践してみるのもひとつの方法かもしれません。

 あなたは「常に何かに追われているような気がする」「漠然と未来がこわい、かならず何かを忘れている」という気持ちになったことはありませんか? もしそうなら、あなたはじゅうぶんがんばっています。この不条理な世界で、あなたは立派に生きています。しんどくなったら逃げ出していい、と言いたいところですが、中学生のあなたが逃げられる場所は少ないかもしれません。これは大人の責任です。なんとなく学校をさぼったっていいのに、世間や親がそれを許さないこともあると思います。そういうときに、「なんとなく休む権利は誰にでもある」と考えている人間がここにひとりいるということを思い出してほしいです。だからなんだ、という話ではありますが、少しでもあなたの心が軽くなったらいいなと思っています。

おわりに

 この記事を読んでくださってありがとうございます。もし、あなたがADHD傾向のあるお子さんを持つ親御さんであるならば、お伝えしたいことがあります。それは、「絶対に怒らないでほしい」ということです。怒ってもなんの意味もありません。そのときは平気かもしれないけれど、傷つきが蓄積していってあとから爆発する場合もあります。まさに私がそうでした。半永久的に消えない大きな溝があなたとお子さんの間に生まれてしまうかもしれません。そうなってしまったら、お子さんはあなたに心を開くことはもうないでしょう。「きちんとした大人」「厳しい社会で生き残れる人間」になってほしいからこそ怒っているのだということは、子どもの立場として私もよくわかっています。

 しかし、傷つけられたことはまた別の話です。愛情ゆえでも、本人が許さないと思ってしまったらそれは一生許されない行為です。一度立ち止まって、よく考えてみてください。あなたが叱り続けることでお子さんの忘れ物は減りましたか? 時間に遅れることはなくなりましたか? おそらく答えはノーだと思います。いまからでもよいので、もし「無駄に怒ってしまっているな」と思うのであれば、もうやめてください。お子さんも、きっと「このままじゃダメだけど、どうすればよいかわからない」と思っていると思います。程度に関わらず、専門家に相談してください。当たり外れがあるのでなんとも言えないところはありますが、第三者に相談することであなた自身も楽になれる可能性があります。

 さいごに、これを読んでくださった当事者のみなさんへ。「これは違う」と思う箇所があれば、いつでも教えてください。それで私が納得すれば、訂正いたします。ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。ぜひ、ご意見をお寄せください。ではまた。